文筆は演奏であり作詞作曲である。

語学

文章は旋律。文体は音色。

文には音が伴う。

人は文章を読むとき脳内で無意識に音読している。

音読は自前演奏だ。

言葉が連なれば音に高低と強弱が生まれ主旋律を織り成す。

人間は文章を読んでいるときその楽曲を再生して聴き入っている。

文章という旋律において文体は音色だ。

文筆道具は音色に差異を生み出す。

キーボードはピアノ。

直筆はヴァイオリン。

私は手書きが好みだ。

紙面は弦であり、硬筆は弓である。

筆の先端が弓の毛であり、紙面との接点が魂柱である。

ヴァイオリンは弓と弦の摩擦により魂柱が振動し、それが空洞で共鳴して音色が鳴り響く。

直筆も同様だ。

紙面に対し筆を引くことで摩擦振動し、余白という空洞で共鳴して文字という音が生まれる。

執筆は言葉という音符を書き連ねた作詞作曲である。

書き手は文章を綴って旋律を奏でる。

小説は幻想曲。日記は回想曲。

美しい響きを奏でる楽曲は独特の世界観を纏わせる。

旋律が耳に入り込めば自然に五感体験へと誘われる。

幻想世界が噴水のように溢れ返り、聴者の身体を優しく包み込んでくれる。

別次元の新宇宙に臨場することで新鮮な機微と情調を堪能できる。

そのとき人は幻想を生きる。

現実は常に理不尽が絶えないが、幻想は自由奔放である。

そこでは新宇宙を謳歌できる。

常識を覆す暗示をもたらしてくれる。

「私が現実に合わせるんじゃない」

「現実を私に合わせさせるのだ」

その夢想を想起させてくれるのが幻想であり旋律だ。

文章を書き綴る活動は作詞作曲である。

音感の美しい文章は読み手の脳内で自然演奏され、心地良い陶酔をもたらす。

文章は旋律。文体は音色。

文筆は演奏と作詞作曲。

私は随筆の弦楽器で独創旋律を奏でる。


【心髄すばる / 筆ペン自筆】