忘却力を揮って発想領域を自由開放し、新奇なる概念を創出する。

生き方

私は偶発的に生きている。

昨日思考していたことも睡眠を経ると初期化され、白紙状態で今日が開幕する。

人間は忘却力に優れている。

自分にとって重要性が低い事象は綺麗さっぱり忘れることで脳内空間を新陳代謝して発想領域を一新しているのだ。

人工知能が記憶力の極上体だとしたら、私は忘却力の極上体である。

なんせ30秒前に何を思考していたのかが思い出せない。いや、15秒前ですら忘れ去っている。私は短期忘却力が異様に優れている。

その利点は意外に多い。

まずは現在進行形に専念できること。過去の思考に囚われずに現在に即した発想が生じやすいこと。

己の行動が偶発的であり論理的でないため、他者による再現性が低く独自性が強まること。

記憶しにくいが故に、常識を超越した新概念を創出する可能性が高まること。

忘却力と奇抜力は密接に関連している。私はそう感知している。

現在から過去に至るまでの歴史を詳細に記憶できている人物を想像した場合、彼は脳内を過去情報が占有しているため、何事も過去に縛られやすく常にそこから想起しがちだ。

そのため常識を超越した奇想天外な着想が得にくく、過去の情報を論理的に辿る思考となるため他者による再現性が高まる。すなわち、己の独自性と希少性は薄まる。

だが過去の事象を記憶していない人物は脳内空間の空き領域が豊富なため現在の物事から自由に発想できる。

記憶に優れると過去に囚われる。忘却に優れると現在から未来を創造できる。

今この瞬間に思い浮かんだ通りに行動し続けることでそれがそのまま軌跡となる。現在の連続が未来と成るのだ。

昨日は予想もつかなかったことが今日には起こり得る。特に睡眠と散歩と随筆は新鮮なる閃きが発生しやすい。

睡眠は「忘却」、散歩は「歩く」、随筆は「書く」という活動によって脳内空間に波浪が自然発生し、脳内概念を柔軟に渦巻くことができる。そのため自ずと着想が得やすい。

数値的かつ論理的な処理と記憶は人工知能に任せ、私自身は感覚的かつ感性的な発想で行動する。

再現性の高い技術は人工知能に任せ、私は偶発性の高い藝術に専念する。

短期忘却力を揮って発想領域を自由開放し、新奇なる概念を創出するのだ。

私はこの刹那を遊歩する。