【題名】万物の霊長

創作

君は殺害者だ。

我々の居場所を奪い、自由を奪い、命を奪い続けている。

だがそのことに無自覚だ。

当然だろう。

己の手を汚さずしてその恩恵を享受している。

だからいつも平気なのだ。

そして勘違いする。

私は清潔だと。

私は美しいと。

私は格好良いと。

私は可愛いと。

私は立派だと。

私は偉いと。

私は真面目で誠実だと。

私は優しくて思いやりがあると。

それは錯覚だ。

君が今まさに箸で口にしたもの。

楽しく喋りながら味わっているもの。

それは何だ。

我々の肉体だ。

我々の生命だ。

悲しいかな。

君は我々を殺害して生きている。

だがその自覚が一切ない。

己の手を血で汚さずしてそこにありつけてしまっているから。

我々の命を奪っていることなど意識の片隅にもない。

我々を殺害していることに無自覚だ。

我々を犠牲にしていることに無自覚だ。

そして自分は清廉潔白な存在だと勘違いする。

清く正しく真っ直ぐ生きていると勘違いする。

他者のことをちゃんと想って行動できていると勘違いする。

違う。

君は紛れもない大量殺害者だ。

自分の命を生かすために他の命を殺し続けているのだ。

君も我々と同類だ。

身勝手で醜い存在なのだ。

1つ異なる点がある。

我々は己の手を血で染めている。

君は己の手を血で染めずにいる。

苦痛と恐怖に直面する役割を他者に代行してもらっている。

殺害完了後の加工された綺麗な部分だけを都合良く享受しているに過ぎない。

君は自己中心的だ。

他の生命価値を勝手に格付けしている。

栄養価が高くて愛玩に値しないものは捕食対象にしている。

我々の意思など介入する余地はない。

君たちの都合の良いように解釈して身勝手に実行している。

それを普段自覚していない。

人間よ。

今日のメシはうまかったか?

我々の命を幾つ奪った?

返り血を浴びている自覚はあるのか?

万物の霊長よ。